三輪楽曲配信における、権利処理の裏側

今日は少し難しい話をするので、ご興味ない方はスルーしてください。

三輪学オフィシャルサイトでは、ここ連日しつこいくらいにお知らせしているように、楽曲やアルバムの無料ストリーミング配信やダウンロード販売をやっている。
一方で僕は作曲家としてJASRACと信託契約を交わしており、著作権の一部を同協会に預けているため、例え自分で作った楽曲についても独断で使用することができない。
それは単にCDを作って売ったりライブで演奏したり、といったことはもちろん、自分のWebサイトに楽曲ファイルをアップロードして、ファンにストリーミングで聴いてもらったりダウンロードしてもらったりする場合でも同様で、それが営利目的であれば煩雑な手続きを経てJASRACにお伺いを立て、そして定期的に利用実績を報告し、しかるべき著作権使用料を支払わなければならない(非商用の場合でも、郵送で「自己使用」の届け出は必要)。
加えて、今こうして実現しているようなストリーミング配信や、決済部分を含めたダウンロード販売のシステムというのは、自前で構築して維持管理するにも莫大な費用と時間がかかるから、サイト上に一からこしらえる、というのは正直言ってあまり現実的ではない。
それでは一体全体、これはどういうカラクリなのか?

「オフィシャルサイトで配信と販売をやっている」と何度も言いつつも、実は何を隠そう、サイト内の楽曲セクションだけは「三輪学オフィシャルサイト」ではないのだ!(笑)
種を明かすと、音楽配信のサービス自体は、”Bandcamp“という米国の事業者に委託しており、同社のサイト内に、三輪オフィシャルサイトにデザインを似せたページを用意してもらっているだけなのだ。
しかもドメインも”music.manabumiwa.jp”に書き換えてあるので、Bandcampのことを知らない人にとっては、「外のサイトに移動した」ということすら恐らく気づかないだろう。
無理矢理例えるなら、日本の東京に新しく「ミワホテル」を建設したけれど、建物のボイラー設備だけ国の認可を取得するのが大変だしお金もかかるので、米国のお風呂屋(そんなモノは普通ないけれど)と提携し、ホテルの大浴場だけは、マンハッタンへとつづく「どこでもドア」でつなげることにした結果、宿泊客であるところのあなたは、東京に泊まりに来たはずなのに実は「ニューヨークで入浴」していた……といった感じだろうか。(爆)

何やら銀行に似せたサイトを作ってお金を騙し取るフィッシングの手法のように聞こえるかもしれないけれど、これは何もサイトに来てくださった方を欺こうというのではなく、単に「三輪学オフィシャルサイト」としての一貫したユーザー体験をお届けするための手段に過ぎない。

さて楽曲についての権利処理は、JASRACのルールでは基本的にその事業を行う主体が行うことになっている。
例えば、ライブ演奏の場合はライブハウスが、CDを販売する場合はその制作者(主にレコード会社)が、ダウンロード販売の場合は配信事業者が、使用された楽曲を集計して著作権管理団体に報告し、使用料の支払いをやっているわけだ。
そしてこの場合、権利処理を行うべき主体は、僕ではなくBandcamp側ということになる。
ところがBandcampは米国の会社なので、悲しいかな日本のJASRACが権限を行使できる管轄外だ。
さらに同社の使用条件に目を通すと、楽曲を提供する側(つまり個々のミュージシャンやクリエーター)が権利処理に関して全責任を負うことになっている。
このことについてJASRACに電話で問い合わせてみたところ、やはり以下のような答えが返ってきた。

「Bandcampさんは海外の法人で、しかも日本での事業展開はされていないようなので、我々(JASRAC)が使用許諾を出すことはできません。
したがって三輪先生ご自身が直接、現地での権利処理をしていただくことになります」

じゃあ、自分の曲なら問題なく配信や販売ができるのか?
これについて尋ねると、

「いいえ、先生は外国地域での管理の除外を特に指定されていませんので、米国でJASRACと相互協定を結んでいる団体、例えばネットでのダウンロード販売などをされるのでしたら、同国内で録音権を管理しているHarry Fox Agencyから許諾を得ていただく必要があるでしょう」

う〜む、これはひょっとしたら、国内で処理するよりも手間がかかるのか?
とはいえ、ここで引き下がっていても埒があかないので、早速そのHFAに、何らかの手続きや著作権使用料の支払いが必要かどうか直接メールで問い合わせてみたところ、

「あなたが日本のJASRACと信託契約を結んでいらっしゃる限り、米国内でCDの制作や楽曲配信を行う場合はライセンスの取得が必要です」

とのこと。
つまりは結局、日本で音楽配信事業をやるのとまったく同じように、たとえ著作者本人であっても利用者として自分で権利処理をクリアし、利用のあった曲目と数だけ著作権使用料を支払うことになるわけだ。
払ったお金はHFAが手数料を差し引いて日本のJASRACに送金し、そこからさらにJASRACが手数料を差し引いて、ようやく僕のところに還流してくる。

こう書くと、本当に面倒が増えただけのように聞こえるけれど、ところがどっこい、これが実は軌道に乗ってしまえば国内の権利処理より格段にお手軽なのだ!
HFAの場合も、JASRACと同じように利用する楽曲とその数量(ダウンロード販売の場合は見込み数量)を申告してその都度使用料を支払う点では変わりないのだけれど、その数量がよほど大量でない限り、やれ利用前に「サービス概要書を提出しろ」だの、「定期的に利用実績の報告をしろ」だの、「自分で無料配信するときに報告書を郵送しろ」だのと、面倒なことが何もないうえに、大きくて見栄えの悪い「許諾マーク」画像の貼り付けによってサイトのユーザー体験が損なわれることもない。

ライセンス購入のシステムはとても使いやすく手続きもすべてオンラインで完結するし、支払いもクレジットカードが使えて、さらにAmazonや楽天のようにショッピングカートに商品(楽曲ライセンス)を入れてチェックアウトする仕組みなので、別途、銀行振込などの手間もかからない。
支払いに関して見逃せないのは、JASRACの場合は利用されたダウンロード数、ストリーミング数を定期的に報告して、それに基づいて後から請求がなされるのに対して、HFAの場合はこちらが見込みダウンロード数を見積もってあらかじめライセンスを購入しておき、実績がそれを上回るようなら追加でまた購入する仕組みなので、とても手軽に使えるということ。
考え方としては、CDを売れる見込み分プレスして、その際に著作権使用料を支払うのとまったく一緒で、ネットだから何か特別なことがある、といったことはまったくない。
しかも一度購入したライセンス曲目は、システム上に履歴として残っているので、追加ライセンスが必要になったら、そこから選択してショッピングカートに入れ、すぐ購入できる。

それにしても著作者本人が自分の国でやるより、外国の団体を通じて権利をクリアした方がはるかに事務処理がシンプルでやりやすくなるというのは、考えてみれば皮肉で悲しいことだ。
少なくともHFAは、著作者に限らず録音物を利用したいすべての人にとって使いやすい仕組みを提供しているし、そうしようと常に努力を惜しまない姿勢が感じられる。
何と言っても音楽ユーザーは著作権管理団体にとっても大事なお客様なのだから。
翻ってJASRACは、とにかく何をするにも手続きが煩雑で、特に著作者本人であってもネットでの自己使用の届け出は郵送でしなければならないのには閉口する。
すでに作品届(新しい楽曲を制作した際にJASRACに対して行う登録)には電子署名を使ったオンラインシステムが整備されているのだから、その仕組みに自己使用申請の機能を追加すれば済むだけの話なのに、なぜこういった些細な労力を惜しむのか。
一般の音楽利用者にとっても、まるで役所のようにあれこれ面倒な手続きを強いられると、もう嫌気がさして音楽から離れていってしまうだろう。
とにかく、HFAに見られる「少しでも音楽をたくさん使ってもらおう」という気概がまったく感じられないし、むしろ上から目線で「音楽を使わせてやってるから有り難く思え」と言われているようで、どうにも良い心持ちがしない。

前に書いたように、音楽は聴いてもらってナンボの娯楽だ。
JASRACだって、広く音楽の利用を促進するのがその根本理念であるはずだから、徹底した利用者本意のサービスを切にお願いしたい。
ここまでシステムが前時代的だと、我が国の著作権法の厳格さもあいまって、日本からはBandcampやSoundCloudのような革新的なサービスの登場は望めないだろうし、ちょうど今、苦境にあえいでいる製造業と同じように、音楽産業もまた空洞化してしま

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