作曲家を志す人へ

最近、若い方からよく「どうしたらプロとして作曲の仕事がもらえるようになれますか」といったような内容のメールをちょくちょく頂くようになってきたので、自分の体験談を交えてその辺りについて、私の考えなりを書いてみようかと思う。

昨今はコンピュータ技術やインターネットの普及で誰でも音楽の才能があれば自分の作品を自宅でラフ制作から完パケまでの全工程を仕上げて世界中に向けて発表することができるようになってきた。皆さんの中でも、ご自身のWebサイトやMySpaceYouTubeチャンネルなどで自作曲を発表されている方がいらっしゃるかと思う。
インターネット以前の時代は自分の曲を広く世間に知らしめようにも、デモテープをレコード会社や音楽事務所に送るとか、地道にライブ活動を続けてファンを増やしつつ音楽関係者から見いだされることに期待をかけるといった方法に限られていたのだから、その当時と比べれば現代の方が当然チャンスは広がっているだろうと安易に思われがちだけど、実は世の中そんなに甘くはなく、当然自己アピールの敷居が低くなった分、同じことを考えている人はそれこそ星の数ほどいると考える方が自然である。
熱意ある人は当然ネットベースの活動だけでなく、やっぱり昔ながらの地道な努力をおろそかにしていないものだし、やはり音楽というのは一種のコミュニケーションでもあるので作り手の顔が見える方が受け手にとっても断然強い印象を与えられるはず。
それから大事なのは、常に音楽する環境に身を置いて、なおかつ自分を磨く努力を怠らないということ。私、三輪も幼少はエレクトーンを習っていたとはいえ、その後はつい最近まで独学を貫いていてあまりバンド活動というものもしてこなかったけれど、やはり一人で何かを続けるというのは並々ならぬ精神力が必要で、モチベーションを維持するのも難しい。
遅すぎる感はあるけれど最近になってようやく、私もちゃんとした先生についてピアノの手ほどきを受けるようになったけれど、ここ1年で学んだことはこれまでの音楽人生15年分と同等かそれ以上に得るものが多かったし、何より志を同じくする仲間たちを得て、彼らから受ける刺激が自分の制作に与える影響も計り知れないものがあったと思う。
ただし焦りは禁物。私の音楽仲間の間でも、自分よりはるかに卓越した演奏スキルを持っている者、たくさんの仕事のキャリアを積んでいる者がいるけれど、それは彼らが相応の努力をこれまでにしてきたという証左のほかならない。
同じように自分に今できることにベストを尽くせば、結果は後からついてくるものである。
具体的に曲作りのスキルを高めるための早道は、やはり自分の好きなアーティストの作品をまずは耳コピー(採譜)するなどしてメロディラインやコード進行、アレンジなどをひたすら吸収することではなかろうか。
とはいえ吸収したものをそのまま形にすると「パクリ」になってしまうので、とにかく色々なアイディアを充分に頭の中で熟成させてから、自分なりの解釈でそれらを再構築すると良い。
こうして自分の作曲や編曲の引き出しを充実させたうえで、それらを8割ほど、それからまったくの自分のオリジナルの部分を2割ほどブレンドさせるのがバランスの取れた楽曲制作の黄金律、というのが私の持論である。
同時に上記と矛盾することではあるけれどクリエーターたるもの、流行りモノに群がったり周りの空気に流されたりせず、自分の世界を持って大事に育てて行くことがとても大切。ミーハーになってはいけません。(笑)
それから、これが一番大事なことかもしれないけれど、ただ単に音楽を作って奏でられるだけではなく、プロとしてそれを飯の種にするにはやはり、音楽とは関係ない基本的な「人間力」を磨く……すなわちちゃんと大人として精神的、経済的に自立していることが大前提にあると思う。
あまりこんなことは細かく言いたくないけれど、社会人としての常識やビジネスマナー、身の丈にあった金銭感覚や人付き合いなど、どれも当たり前のことのようで、昨今若い人と話をすると時々「あれ?」と思うようなことが少なからずあるし、貯蓄のまったくない状態で「作曲家として開業します!」なんて言ってみても仕事が来なければいきなり路頭に迷う、なんて悲劇になりかねない。
その辺りに自信のない人は、まずは音楽関係でなくても自分にできそうな仕事を見つけてそこで精一杯働いてみると、そこから多くのことが学べると思う。
自分も昔はIT関連の会社でプログラマーをしていたけれど、正直当時の私はナイーブで社会人としての自覚がまったく欠落していて、今思えば上司や取引先に迷惑ばかりかけていた。
とはいえそこでの経験が積もり積もって、今こうして人並みに自力で仕事を頂いてご飯を食べているベースになっていると思うと、当時お世話になった人たちには本当に頭が上がらない。
最後に、音楽に国境はない。これからの時代、常に「世界の中の自分」という視点を持つことが大事になってくると思う。音楽に限らず日本のクリエーターは世界の中でも独自のセンスと高い技術を持っている人が少なからずいるけれど、非常に狭い内輪のコミュニティでわいわいするだけで自己満足している人が多くて、これはとてももったいないことだと思う。
ただでさえ日本は少子高齢化と国そのものの衰退で、正直10年後、20年後この国が今の姿のままで存続しつづけているかはちょっと疑わしい。
全体のパイが少なくなっているということは、その中で商売していくためには自分の好きなことではなく、多くの人たちにウケが良いものを作らざるを得ないし、なおかつ日本の人口の大半は中高年ということは、若者向けよりも、むしろ彼らお年寄りのハートをわしづかみにするようなものを追求しなければ商売として成り立たないかもしれない。
だったらこの小さな島国から世界全体に視野を拡大することで、自分のやりたい音楽を通して自己実現できるチャンスもおのずと大きくなるというものである。
もちろんそのためには英語を使いこなすことが必要になってくるので、音楽のスキル同様、こちらも貪欲にスキルアップを目指したい。

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