CubaseからLogicへ -前編-

8月にちょっとした仕事の閑散期があったので、AppleのDAW(Digital Audio Workstation = 音楽制作ソフトウェア)、Logic Studioを購入、一通り使えるようにと学習に時間を費やした。
自分の音楽ソフト遍歴はアマチュア時代に国産PCのPC-9801で動かしていた、RCM-PC98というひたすらテンキーで音符の長さをコツコツ入力して行くタイプのものからはじまって、Windows用のCakewalk Pro Audio(現在のSONARの前身)、さらにSteinberg社のCubaseシリーズへ、そしてちょうど2年前Windows環境からMacへ移行し、CubaseはそのままMacで利用してきた。
音楽ソフトの移行というのは実は大変なエネルギーを要する行為である。
今時のソフトはどれも基本的な概念は似ているとはいえ、今まで手に馴染んで来たキー操作や画面レイアウト、機能の数々をまた最初から習得しなおさなければならないからだ。
Cubaseは実に10年近く使い続けて来たソフトで愛着もあるにも関わらず、そんな苦労を強いてまでLogicへ移行した理由は、最近のCubaseに対していくつかの不満を抱えていて、それが知らずのうちに仕事上のストレスになっていたこと、また周りの音楽仲間でLogicユーザが多かったこと、そしてApple製品であること(笑)。
Cubaseは最新バージョンの5.5まで使って来たものの、どうも最近Cubaseに、Macユーザがないがしろにされているように感じられる。
バージョン5の時はCarbonからCocoaへの大幅なアーキテクチャの変更があったためか、それまで非常にスムーズだった画面表示がとたんにコマ送り再生のようにカクカクしはじめて、ミキサーのフェーダーをひとつ動かすだけでも非常な苛立ちを覚える事態に。
5.5でその不具合が直ったものの、今度は特定のプラグインのプリセット画面で検索ボックスが行方不明になったり、大してCPU負荷が高くもないのに突然オーディオがドロップしたり、マーカーウィンドウでマーカーの削除ができなくなったりと、怪しい挙動が目立つ。
そして一番ストレスになるのが、MacBook Proのトラックパッドやデスクトップ機に標準添付のMagic Mouseなど、純正ポインティングデバイスでのスクロールの操作性がすこぶる悪いことだ。
これらのポインティングデバイスは表面がタッチパネルになっていて、iPhoneのようにその上に指を滑らせると慣性を伴ってす〜っと流れるように気持ちよくスクロールするようになっている。
ところがCubaseではこの機能にきちんと対応していないため、例えばプロジェクトウィンドウやキーエディタ(ピアノロール)などのウィンドウで少しでも右手の指を滑らせると、ものすごい感度で端から端までぐわっと一気にスクロールしてしまう。
まあ、Windows用のマウスを代わりに使うとか、OS Xの環境設定で慣性スクロールをオフにするとか回避方法はあるにはあるのだけど、そのプラットフォームで最もスタンダードな操作系にちゃんと対応しないというのはいかがなものか。
増してやMacというのはハードとOS、そしてアプリケーションとが三位一体となって「Macの上質なユーザ体験」を提供しているというのに、この仕打ちはなかろう。
基本的に自分は、音楽というのは個々の作家のセンスやスキルで善し悪しが決まるのであって、決してそれが道具によって左右されるものではないという信念があるので、普段使う楽器や機材、ソフトウェアなどにあまりこだわりは持っていないのだけど、こうも日常的にストレスを被るのであれば話は別。そんなわけでここはひとつ長年お世話になったCubaseに別れを告げ、Logicへの移行を決意するに至った。
後編は、実際にLogicを使ってみたインプレッションなどを色々と書いてみようと思う。

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